大きな黒い犬

パニック障害広場恐怖症と診断されて、一年が経った。

 

たった一年で私の生活はとっても変わった。

この病気になってしまったのだから、とうぜんながら辛いことが増えた。

電車に乗れない。買い物に行けない。外で食事ができない。映画に行けない。

今まであんなに好きだったいろんなことがほとんど全部できなくなってしまった。

無理してなんとかできたとしても、少なくともただの苦痛になってしまった。

 

病気になってからというもの、とてつもなく大きくて重い、虚ろな目の犬が常に自分にのしかかっている。

この犬は、「恐怖」そのものである。

この犬が自分に覆いかぶさっているせいで、足も重くなって、頭では恐ろしいことばかり思い浮かべるようになる。

視界はせまくなって、自分が今いる部屋の出口と自分との距離、レジで自分の前に並んでいる人が会計を済ませるまでの時間、自分が歩いている道は「空車」表示を出したタクシーがよく通る道がどうかしか考えられなくなる。

犬はとても短気で、一度暴れ出すと私の心臓はおかしいほど早く打ち、苦しくなって手足はガタガタ震え、胃が締め上げられる。

その恐怖はあまりに強烈なので、死を思うしかない。

だから、できるだけ犬を刺激しないよう、いつも爆弾を抱えるようにソロリソロリと生活している。

なにが犬の怒りをもたらすトリガーになるかは、自分でもわからない。

時には匂いだったり、味だったり、疲れや頭痛など自分のからだのことだったりする。

犬の怒りがひとたび起こったときに安全な場所に逃げられなかったり人に見られたりしたら大変だから、自由のきかない電車の中や、友達と会うこと、人がたくさんいるところは避けなければいけない。

そしていつしか、それらが恐怖そのものになってくる。

 

今は投薬治療を受けているけれど、まだまだこの巨大な犬を飼い馴らせそうにはない。

私の生活のボスは私ではなくて、この犬に取って代わられた。

 

このブログを始めたきっかけは、この病気に苦しんでいる人と繋がることができたら、考えを共有することができたら、という思いからである。

それを通して、この病気についてもっと多面的な捉え方ができればと思っている。

 

いったいどうやってこの病気が始まったのか、

どうやって私は自身の生活のコントロール権を失っていってしまったのか、

おいおい書いていこうと思う。